臆病者で何が悪い!
「内野さ……」
「ん?」
生田の目が、揺れる。こんなに明るい部屋で、生田の顔を至近距離で見たことはなくて。その瞳にどこか不安そうな顔をした私が映っていた。
「さっきの、イヤだったよな……? 勝手にしておいて、今更聞くのもどうかと思うけど」
キス、のことだよね――?
私があまりに怯えたような態度を取っているから、だからそんなことを聞くのだろうか。
「よく分からないけど――」
生田とのキス。びっくりした。信じられなかった。何が起きたのか分からなかった。だけど、何故だろう。嫌だとは少しも思わなかったんだ。
好きな人でなくても、キスって出来るものなの――?
分からない。
「イヤ、ではなかった」
でも、正直な気持ちを答えたいと思った。こんな質問、恥ずかしくてすぐに俯いてしまったけれど。
「……なら、触れてもいいか?」
いつもの飄々とした声じゃない、どこか不安げな声。その声と言葉に驚いて、顔を上げてしまう。
「ただ、抱きしめるだけだから」
前髪の隙間からのぞく生田の目。切れ長の目が、私を気遣うように見つめているのが分かる。生田は、私が緊張して不安になっているのが分かるから、だから私を怖がらせないように、安心させるために接している――。
自分が生田のことをどう思っているのかなんて分からない。でも、私は頷いていた。そうしたら、生田の手がおそるおそる私へと伸ばされて。その手がそっと私の肩を掴み、そのまま身体をくるりと回されたかと思ったら、後ろから抱きしめられていた。生田の腕が私の肩を抱き、首元で交差する。長い脚の間に私はすっぽりと収まっていた。
ドクドクドクドク――。恐ろしいほどに鼓動が激しくなる。
「……これなら、俺の顔は見えない。俺だと思わなくていい。ただ誰かがあんたの傍にいるってことにして。それなら、少しはその緊張も解けるだろ? 心のままに吐き出せる」
生田の囁くような声が耳元すぐ近くで聞こえる。その声はそのまま胸に響いて、私の心を揺さぶる。