臆病者で何が悪い!


「――さっきは、きついことばっか言って悪かった」


静かな部屋の中、生田が穏やかに言葉を連ねて行く。その静けさと、抱きしめられている腕と胸の温かさに、身を委ねたくなる。私のささくれだった心が平らになって行く。


「ううん」


生田の腕の中で、頭を横に振った。


「飯塚はあんたの親友なんだろう? 辛かったな……」


生田の労わるような、慰めるような声が私を包み込んでは沁み渡り、心の強張りを解いていく。


「そう、だね。辛かった」


これまでどんな辛いことも惨めになることも、全部自分一人で飲み込んで来た。
こんな風に誰かに慰められるようなことはなかった。心の中のカッコ悪い部分を口に出すのは初めてで。そんなことをしてしまったら、もっともっと惨めになると思っていた。でも、今は、全部言葉にしてしまいたい。


「田崎さんは、私の癒しだった。いつも威勢よくして明るくして、それが嫌だったわけじゃないけど、それでもふと寂しくなる時、田崎さんの優しい笑顔は私の心の支えみたいなものだった」

「……ああ」

「毎日、また頑張れてまた笑えるための活力で。田崎さんはそういう存在なんだって自分にも言い聞かせていた。本当に好きになったりしないために」


ただ私を抱きしめて、生田は私の言葉を聞いてくれていた。


「親友の希にだってそう言っていたし。だから、希は何も悪くないの。自分でさえ田崎さんに踏み込まないようにしてたつもりだったから。それが、まさか、希とのことを知ったからって、あんなにも落ち込むなんて自分でもびっくりしたんだよ」


私の首元にある生田の腕を、無意識のうちに強く掴んでいた。


「泣いちゃうほど好きだったなんて、思わなくて。でも――」


もうずっと長い間向き合わずにいた自分の気持ち。誤魔化して言い聞かせて、都合のいいように整理して来た田崎さんへの想い。


「生田に話してみて、少し冷静になれたよ」


こうして、一つずつひも解いていくみたいに話していると、自然と心は落ち着いていた。


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