臆病者で何が悪い!


そもそも、キスって、どういう時にするんだっけ……?

キスしたいって思った時。

キスしたいって思う相手って誰……?

好きな人――。

好きな人――。その答えは却下だ。

生田が私を好き……。ないないないないないない。

それはないだろう。男の人だもの。好きとかじゃなくても、そういう雰囲気で流れでしちゃうってこともあるだろうよ。

――何とも思っちゃいない女にキスするほど女に飢えてないんだよ。

生田の声が脳裏を過る。確かに、女に困っているような男じゃないだろう。

じゃあ、なんで?

私が、物珍しいタイプだったから、興味本位で。ああ、その線はあるかもしれない。

生田はどうして、私と過ごしてくれたんだろう。あんな風に、抱きしめていてくれたんだろう……?

同情した。憐れんだ。人として放っておけなかった。生田が優しい人だった。

普通ならそのあたりが妥当な答えなんだけれども、既にその答え全部を否定されている。

――その頭の中で、俺のことを考えろ。
――だから、俺を見てろ。

俺を見てろ=〇〇

その方程式の答えがまるで分らない。

『俺を見ていろ』というのは、『俺のことを考えていて欲しい』から。
『俺のことを考えてほしい』と思うのは『俺のことを好きになってほしいから』
『俺のことを好きになってほしい』のは『あんたのことが好きだから……』

だから、その答えは違うんだっつ―の!

――その意味、分かる?

分かるか―っ!

分かるわけないんだ。こんな経験皆無だもん。そんな高度なやり取り、リア充の男女が繰り広げるものでしょうが。

さすが、生田。
これまでずっと、自分を想ってくれる人がいるのが普通で、告白とかなんて何度もされちゃったりする学生時代を送って来たんだろう。社会人になっても、お近づきになりたいって思われる立場の人間で。私とは全然違う場所にいる人だ。


< 79 / 412 >

この作品をシェア

pagetop