臆病者で何が悪い!
「今日は、ありがとう。来てくれて……」
二人でよく来るレストランで、向かい合って座る。
「そんなの、当たり前じゃん。希の誘いを断ったりしないよ」
私は、なるべく笑顔を向ける。希のその緊張を解いてあげたいからだ。
「本当に、沙都には申し訳ないって。早く言わなきゃってずっと思っていたんだけど言えずにいたら、あんな形で知られることになって。一番最悪なパターンになった」
その綺麗な顔が、俯いているせいで良く見えない。これまで誰より語り合って来た友人の見せる態度が、私の心を苦しく疼かせる。
「希は、私のことを思ってくれたんでしょう? だから、言えなかったんだよね。でも、変な気を回し過ぎ。私は希に、田崎さんのこと『憧れているだけだ』って言ってたよね? だから、希が私に気を使う必要なんて一つもないんだよ」
「でもっ――」
「だから、もっと早くに言ってくれればよかっただけの話」
希の表情から分かる。希は私の親友だった。私の言葉の裏側にある真意を、親友だからこそ感じていただろう。だからこその罪悪感だ。でも、私は希に「ただの憧れ」だと言っていたのだ。希は何も間違っていない。
「それにしても。あんな爽やかな人と付き合えて、本当に羨ましいんですけど。いいなぁ」
頬杖をついて、希に微笑む。
私、ちゃんと笑って言えているよ――。心の中で生田に向かってそう言っていた。
「田崎さんの方から告白されたんだよね? さすが希。やるじゃん」
私があっけらかんとした雰囲気でそう言ったから、やっと希も安心したようだった。ずっと強張らせていた表情をこの日初めて緩ませた。
「……びっくりしたけどね」
恥ずかしそうにしながらも希が話をしてくれた。田崎さんに告白されて、その時初めて自分の気持ちを知ったということ。想いを告げられた時、自分の中で断るという選択肢がなかったということ。付き合うことになって、ずっと心の中に私のことがあったということ。何度か心はチクリとしたけれど、それでも希の話を笑って聞くことが出来た。時折、上手い相づちを入れたりして。
「希、良かったね。大事にしてもらいな」
「うん」
幸せそうに希が微笑む。
男の人に愛されていると心から実感できている女の微笑み――。
そんな経験自分にはないけれど、きっと目の前にある希の笑顔がそういうものなんだろうと思った。それは、本当にキラキラと輝いているから、もともと綺麗な希の顔から幸せオーラが発光している。