臆病者で何が悪い!

「何をおっしゃる。生田だよ? あの人、結構モテるよね? 女に困って誰でもいいからって感じじゃない。そんな人がわざわざ私に来る? あり得ない」

私は一体誰に対して訴えているのだろうか。それはもう必死になって、自分に言い聞かせているかのようだ。
これまでの内野沙都の人生を振り返ればおのずと答えは出て来る。

”もしかしたら……”とわずかでも思ってしまったがために、大打撃をくらって来た。
中学の時も、大学の時も。

もう同じ過ちは繰り返さない。絶対にほんの少しの勘違いもしたりしないんだから。

身の程をわきまえた女だってことくらいしか、もう自分自身の長所なんてないのだ。それまでなくしてしまったら、本当にどうしようもない女になってしまう。

「どうしてあり得ないなんて言いきれるかな。生田君はああいう雰囲気だから分かり辛いけど、実はすごくいろんなことが見えている人だと思う。それに、生田君って、意味もなく嘘つくような人かな? そんな面倒なことする人には思えないんだけど」

だーかーら。そうやって私をそそのかさないでよ。誘導しないでもらいたい。

そそのかし罪で逮捕するぞ。

そう目で訴えてみても、目の前のキラキラ女子はまったくその口を止めようとしない。

「今思えば、なんだけど。生田君が私に『用もないのにあんまり来るな』って言ったの、あれ、沙都のためだったのかも。私がそれを言うのもどうかなとは思うんだけど……。実は、生田君、すごく健気な人なんじゃない?」

え――?

それはつまり、田崎さんを好きな私のために、希をお邪魔虫的存在だとして遠ざけてくれたってって言いたいの――?

そんなことまで生田が考えているはずがない。

「はいはい、もう終わり。希って、そんな妄想を繰り広げる子だったっけ? 考え過ぎ。それはもう妄想、幻想、大きな間違い」

放っておいたらどこまでも暴走しそうだから、希を遮った。私をその辺の普通の女の子と同じ土俵で考えないでほしい。確かに普通の子なら、そういう予想も立てられる。でも、私に普通の予想を当てはめてはならない。

「でも――」

「私の話はもういいの。田崎さんの話を聞かせなさい!」

お願いだから。私を惑わさないで。
私を、また惨めな世界に引きずり下ろそうとしないで――。

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