キミが可愛いわけがない


「ありがと…」


「ん」


それだけ言った芽郁は、また私の手をギュッと握った。


思い出すな。


小1の頃────。


夏祭りに、2人で迷子になったあの日。



家族総出で地元の夏祭りに出かけた私たち家族と楠木家。


いつものように私と芽郁は手を繋いで歩いていたんだけど、あまりの人混みに迷子になっちゃった。


挙げ句の果てに私は転んでりんご飴を落としちゃうは、芽郁はそんな私をみて泣き始めるわで大変で。



正直、いつも強気な私もこの時はちょっと怖くて。


2人で何度も1人じゃないって言うのを確認するみたいに手を握りあったっけ。



なんだかんだ、私が辛いとか、いつも隣にいるのは芽郁で。


芽郁の力なんか借りずに、もっと上手に人付き合いができればと思うけど、本当に言いたいことを我慢して人と付き合うのはやっぱり疲れちゃうもので、


家族同然の芽郁には結局甘えてしまうし、助けてもらってばかりだ。



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