キミが可愛いわけがない


映画館を出て、ファミレスでご飯を食べても、有馬は終始楽しそうにしていた。


『柚希のうまそうだな!』


ちょっとちょうだい、なんて言われるかと思ったけど、有馬はそんなことは言わなかった。


他のカップルを見ても、さっきみたいに手を繋ぎたいなんてことも言わなかった。


流石に、諦めてくれたみたいだ。


「じゃあ、これで─────」


「あのさっ」

ご飯を食べ終わったので、そろそろデート終了かと思って声をかけたけど遮られた。


その一瞬だけ有馬の表情が真剣で、有馬じゃないみたいだ。


『あと、少しだけ』


有馬にそう言われてから、私は渋々うなづいて、彼と近くの公園に向かった。



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