キミが可愛いわけがない
「まじかよ…」
会場に入って、すぐ目に飛び込んできた。
楽しいそうに笑うユズと、隣の…誰だよあれ。
絶対着たことないピンク色のドレスに、ゆるく巻かれた髪。
横顔だけなのに。
170センチの身長が、ドレスを際立たせていて、正直、息を呑むほど綺麗だった。
なんのために、誰のために。
キミはその格好をしているんだ。
人がユズに声をかけるたびに、胸がキューと痛くなる。
今まで話しかけなかった男たちも、もちろんユズのファンだった女子たちも。
人気者のユズがそこにはいた。
「きゃー!!芽郁くんだー!」
「うそ芽郁くんいるのー?」
俺に気付いた女子が、わーわーと騒ぎ始める。
誰の声よりも。
ユズの声が聞きたい。
ユズに触れたい。
そう思った瞬間──────。
騒ぎに気付いたユズが、こちらを振り向いた。