キミが可愛いわけがない


「なぁ、ユズ」


「何」


私の手を握り締めながら、芽郁が私の名前を呼んだのがすごくくすぐったい。


こんなに嬉しいことだったなんて。


「もう一回、してもいい?」


「……」


ずるい。


1回目も2回目も、突然だったのに。


今度は聞いてくるなんて。


悔しいけど、


まだ芽郁と触れていたくて


離したくなくて


どこにもいかないでほしくて


この時間が終わってほしくなくて



「…うん、」



私が小さくうなづくと



「……ほんと無理」


芽郁はそう声に出してから、


「メガホンゴリラのユズが一番好き」


なんて、ロマンチックのかけらのないセリフを吐いて



3回目のキスをした。













────END────



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