キミが可愛いわけがない
────ピタッ
まだ途中のはずなのに、曲が止まったので私はゆっくり目を開ける。
「いつまでそうやって俺のストーカーするつもり?」
っ?!
「ミスちゃん」
私の存在に彼が気づいていたことにびっくりしたけど、それよりも、私に気づいてくれたのが嬉しいのと同時に、やっぱり変わらないその呼び方に、また傷ついた。
「楽譜置いてくるって行ったままなかなか帰ってこないから…」
顔を出して、ピアノの前に座る彼にそう言った。
創立記念パーティーのピアノ演奏を任された彼は、パーティーが終わった後、誰かをキョロキョロと探しながらそう言って体育館の外へと消えて行ったんだ。
きっと、彼はユズちゃんを探していた。
正直、なんでユズちゃんなんだろうって未だに思うよ。
私ならいいのに。
可愛いとか好きだとか、
好きな人に言われなきゃあまり価値がない。