私のご主人様Ⅳ

その証拠に、普段は部屋にいることが多く、食事も部屋でとることが大半の源之助さんが、梨々香ちゃんと一緒におやつ作りをした時は必ず台所までやって来ていた。

他のみんなには結構遠慮のない梨々香ちゃんも源之助さんにはどことなく遠慮してる。

多分、いくら父親になったとはいえ、源之助さんは梨々香ちゃんにとって恩人だ。そんな源之助さんにどう接するべきか悩んでいるんだと思う。

源之助さんもそんな梨々香ちゃんの気持ちを察して、何とか距離を縮めようとしているんだと思う。

それこそ、梨々香ちゃんの雑誌を拝借して読み込む努力もして。

だから、梨々香ちゃんから誘うのは、源之助さんにとって嬉しいことのはず。だって、それまで一方的だったのが、相手から誘われることで“私もあなたと仲良くなりたいです”って意思表示にもなるから。

台所まで戻ると田部さんが笑顔で出迎えてくれる。暁くんと青海さんは料理の下拵え中だ。

「琴音さん、ありがとう」

「私は、ラスク作った…だけです」

「それでも、お嬢に持っていかせてそのまま話してるなんて、正直驚いた」

平沢さんに頭を撫で回される。と、寝癖みたいな頭になるので途中で逃げた。

「琴音、ケーキどうやんだ」

「わ、私やります」

暁くんの言葉に料理組に加わる。

ここに来てから驚いたのは青海さんが豪快な料理ができるということ。作り方はもちろん、見た目も豪快で中々ボリューミー。

迫力があるからお祝い事にはもってこいです。
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