蜜月なカノジョ(番外編追加)

「ちょっと、オーナーともあろう人間が大声出さないでよ。しかもそのナリで完全に男に戻ってるし」
「…悪い」

葵の言う通り最近の俺は切り替えがうまくいかないことが多い。
とは言っても杏のことを考えている時限定ではあるが。

「んも~、相も変わらずあんたって男は…。とにかく! あんたが杏ちゃんを不安にさせたら本末転倒ってこと。過去に何かあったのかもしれないけど、そういうことまでひっくるめて杏ちゃんはあんたと付き合うことを決めたんだから。そこに込められた彼女の気持ちをみくびっちゃだめよ」
「そんなことするかよ!」
「はいはい、わかったわかった。うじうじうっとうしいオカマオーナーはさっさと次の仕事に行った行った! うちのオシャレで明るいカフェにはうじ虫君はいりませーん!」
「おい、ちょっ…押すなって!」

相変わらずこいつの力はハンパなく強い。
お前こそ女装した男なんじゃないのか?!
…と出かかった言葉は命が惜しくて飲み込んだ。

「切り替えててきぱき仕事して、…早く帰ってあげなさいよ」
「…え?」
「そんでもって杏ちゃんをこれでもかって甘やかしてやんなさい」
「葵…」

腕を組んでどうだわかったか、と言わんばかりに不敵に微笑む我が友人が頼もしく見える。女として意識したことはただの一度もないしこれからも永遠にありえないが、こいつの存在に救われてることは認めないわけにいかない。

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