蜜月なカノジョ(番外編追加)

「杏が嫌がることは絶対しないからそんなに怖がらないで。せっかく二人にとっての初めての旅行なんだから、杏には楽しい思い出だけを残したい」
「ナオさん…」

私ったら…相変わらず情けない。
食事をしてる間はあんなに楽しかったのに。
二人で思いっきり笑い合ったっていうのに。
ご馳走様をしていよいよ寝るだけの状態になった途端、また萎縮し始めるだなんて。
結果こうしてナオさんに気を遣わせてばかりで。

またしても口をついて出そうになった謝罪の言葉をすんでの所で呑み込むと、気付かれないように小さく深呼吸してナオさんを仰ぎ見た。

「違うんです。全然怖いとかじゃないんです」
「…杏?」
「こんな情けない私ですけど、ナオさんと一緒に旅行するって決めたときから……ちゃんと覚悟はしてたんです」
「…えっ?」

あぁっ、こんなことを面と向かって言うなんて恥ずかしすぎる!
でもいつもナオさんに頼ってばかりいないで時には自分から勇気を出さなきゃ。

二人が新たな一歩を踏み出すためには。

「それくらいの覚悟がなければいくらナオさんが相手でも、男の人と旅行だなんてできません。…ナオさんとならいつでもそうなってもいいって……ううん、私自身がそうなりたいって…思ってます」
「……」

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