蜜月なカノジョ(番外編追加)
……本当に…?
本当に、これは偶然?
もしかして、もしかしてだけど、仕事帰りに後をつけられていて、こうして偶然を装って待ち伏せていた…なんてことは、絶対にない…?
酷い発想だと頭では理解できていても、過去のおぞましい経験の数々が私を疑心暗鬼の渦へと引き摺り込んでいく。
「すっげー高そうなマンションだけど、もしかしてここに住んでるのか?」
「……」
袋を胸に抱きかかえたまま表情を強ばらせる私に、小笠原君はバツが悪そうに視線を逸らすと、やがて探るような目をこちらに戻した。
「…ごめん。信じてもらえないかもしれないけど、今日会ったのはほんとに偶然だから」
「え…?」
「俺の態度を見てれば疑われても当然だよな。でも誓って言う。絶対に待ち伏せなんかしてない」
「…!」
悲しそうに謝罪の言葉を口にしたその姿にズキンと胸が痛む。
自分の態度が人を傷付けているのだという現実に、罪悪感で押し潰されそうだ。
「…でもせっかくの偶然をみすみす無駄にもしたくないから。だから言わせて欲しい」
そう言って向けられた真っ直ぐな眼差しにドクンと心臓が騒ぎ出す。
その目は燃えるように強い何かをその奥に秘めている。
…いやだ、何も言わないで…!