蜜月なカノジョ(番外編追加)

「イヤっ…! 離してっ、離してぇっ…!」
「離さない!! 俺はお前のことが、丸山のことが___うわぁっ?!!」

必死に藻掻いてもビクともしなかった体が突然目の前から消えたかと思えば、直後ドカッというすごい音が響いた。

「え……?」

ガクガクしながら顔を上げれば、目の前にはすらりとした長い足が私を守るようにして立ち塞がっている。
その向こう側で壁に背中を激突させ苦悶に顔を歪める小笠原君が見えた。

「…っ、ナ、オさっ…」

ぶわりと涙が溢れ出す。
ほとんど聞こえないほどの声を出した私に、全身から怒りのオーラを滲ませていたその人が振り返り、そしてふわりと私の大好きな笑顔を浮かべた。

「…杏。もう大丈夫よ。大丈夫」
「___っ、ナオさんっ…!」

色んなものが溢れ出した私は、両手を広げたナオさんの腕の中に飛び込んでいた。
ここがどこでどういう状況であるかなんて、そんなことは全て忘れて。

「可哀想に。怖かったわね」
「ひっ…うぅっ…! ナオさんっ…ナオさんっ…!」
「可愛い可愛い杏。どんなときでも必ず守ってあげるから」

しがみついて震える私をきつく抱きしめながら、ナオさんが魔法をかけるように頭や額にキスを落としていく。
やがてそれが唇に辿り着くと、目の前で起こっている信じられない光景に、転がったままの小笠原君が声にならない悲鳴を上げて硬直した。

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