百花繚乱 社内ラブカルテット
チャームポイントでもある、男にしては大きな目を悪戯っぽく細めて、景はわずかに背を屈めながらコソッと呟く。


「色っ、て、なっ……!」


私をからかう彼の言葉にギョッとして、反射的に辺りを窺い見た。
今くらいの小声が届く近距離のテーブルに、他に人がいないことくらいわかってる。
だけどこんな真っ昼間っから、景が際どいことをシレッと言ったせいで、私の方が挙動不審になってしまう。
慌てる私に、景は面白そうに肩を揺らしながら、再びスッと背筋を伸ばした。


「古川さんはもうちょっと自分の見た目、自覚した方がいいよ。結構人目を引く美人なんだから」


景はそう言いながら左手に持っていた茶碗をトレーに戻し、口の中のご飯を水で流し込んだ。


「け……田神君。何言ってるのよ」


頬に熱が帯びるのを感じる。
大して意味がないとわかっていながら、風を送るように手をヒラヒラと翳し、恥ずかしさをやり過ごす。
なのに景は、箸も置いてテーブルに両肘をつき、顔の前で両手の指を組み合わせた。
組んだ手の向こうから、少し上目遣いに私を見遣ってくる。


「ほんとほんと。ウチの営業本部の男の中で、お前のこと狙ってるヤツ、結構いるんだぞ」

「えっ?」
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