百花繚乱 社内ラブカルテット
再び茶碗と箸を手にして、丸い大きなハムカツに豪快にがぶりと噛みつく。
だいぶ冷めているんだろうけど、フライ特有の『サクッ』という音はまったく聞こえない。


照れ隠しなのか、景はさっきまでよりハイペースで食事を進める。
私は彼を軽く上目遣いで見つめてから、少しくすぐったい気分で首を縮め、うどんのつゆをレンゲで掬って一口飲んだ。


景は人懐っこくて明るい。
ちょっと子供っぽいところもあるけれど、同期会でもムードメーカー的な存在で、いつも人の輪の中心いる人だ。


男女問わず友人が多く、気さくでフレンドリーな性格で、みちるには『チャラい』と言われてしまうけれど……。
いつもなんとなくみんなから一歩引いて、大胆に弾け切れない私を、輪の中心までグイグイ引っ張ってくれる頼もしい彼。
私はレンゲを宙で止めたまま、景をボーッと見つめた。


私たちの代は特に仲がいいと評判で、みちる以外にも共通の仲間がたくさんいる。
とは言え社内恋愛だし、暗黙の了解のような慣習に沿って、私も景も、付き合ってることはお互い秘密にしてきた。


だけど、最近ちょっと意識し始めていることがある。


景も無事調査役に昇進したし、お互いアラサーだし。
このまま普通に付き合い続ければ、近い将来、景との間に結婚の話も出るようになるかな……と。
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