百花繚乱 社内ラブカルテット
急いで仕事を終わらせる必要がなくなったから、私は急な残業を引き受けた。
主に一流総合商社との取引を担当している営業第一本部から、輸出ドキュメントチェックの依頼が至急で入ったからだ。


日中で急ぎじゃない場合は、バックオフィスである業務室に回される仕事だけど、海外の銀行から発行された輸入信用状の有効期限が迫っている為、課長経由で頼み込まれてしまったのだ。


終業時間ぎりぎりの依頼で、他の同僚たちの顔には『できればやりたくない』という空気が色濃く表れていたから、持ち込まれた書類は全部私が引き受けた。
細かい英語を読み解かなきゃいけないドキュメントチェックを十件分こなすのは、慣れた私でも割と負荷がかかる仕事。
すべて終わらせた時には、時計の針は午後七時半を過ぎていた。


届けてそのまま帰るつもりで、帰り支度を整えた。
結構なカサになる書類を胸にしっかりと抱えて、私は本店ビル四階にある営業第一本部に立ち寄った。


法人取引部門の根幹部署である営業部が全フロアを占めるこの四階は、役員フロア以上にゴージャスな空間だ。


総合職の若手行員にとって、二十代で営業本部に配属されるかどうかが、出世街道の分岐点になるとまで言われている。
つまり、ここに所属する若手行員は、銀行内でも精鋭された営業マンということだ。
< 17 / 33 >

この作品をシェア

pagetop