百花繚乱 社内ラブカルテット
彼は私の手からズシッと重量のある書類を受け取り、一瞬『お』というような表情を浮かべる。
「週初めから残業させて、申し訳なかった。助かったよ、ありがとう」
彼は自分のデスクに山を作り、前髪を掻き上げながら爽やかに微笑んだ。
そんな笑顔を真っすぐに向けられて、私の胸もドキッと小さく跳ね上がる。
「い、いいえ。私、特に予定もなかったし。仕事ですから、お気遣いなく」
私は反射的に胸に手を当てて、ちょっとぎこちない笑顔を見せた。
彼は営業第一本部の課長、樫本凉矢(かしもとすずや)さんと言う。
私より四年上の三十三歳。
入行六年目でビッグプロジェクトメンバーに選出され、ロンドン支店へ赴任したという経歴を持つ。
そのプロジェクトというのが、世界最大の海運会社グループとの業務提携というとても難しいものだった。
取引獲得に成功すれば、ウチの銀行のイギリスでの地位が確立するだけじゃなく、日本企業との連携を斡旋することで日本の経済発展に一役買うこともできる。
莫大な収益見込みを計上できるけれど、今まで日本の銀行と取引のなかった難攻不落先で、もちろん国内の他行も長年に渡り仕掛けていた、争奪争い激戦企業だった。
樫本さんは日本を出る時、『何年かかってもやり遂げて来い』と送り出されたそうだけど、なんとたったの二年で業務提携を締結させたのだ。
「週初めから残業させて、申し訳なかった。助かったよ、ありがとう」
彼は自分のデスクに山を作り、前髪を掻き上げながら爽やかに微笑んだ。
そんな笑顔を真っすぐに向けられて、私の胸もドキッと小さく跳ね上がる。
「い、いいえ。私、特に予定もなかったし。仕事ですから、お気遣いなく」
私は反射的に胸に手を当てて、ちょっとぎこちない笑顔を見せた。
彼は営業第一本部の課長、樫本凉矢(かしもとすずや)さんと言う。
私より四年上の三十三歳。
入行六年目でビッグプロジェクトメンバーに選出され、ロンドン支店へ赴任したという経歴を持つ。
そのプロジェクトというのが、世界最大の海運会社グループとの業務提携というとても難しいものだった。
取引獲得に成功すれば、ウチの銀行のイギリスでの地位が確立するだけじゃなく、日本企業との連携を斡旋することで日本の経済発展に一役買うこともできる。
莫大な収益見込みを計上できるけれど、今まで日本の銀行と取引のなかった難攻不落先で、もちろん国内の他行も長年に渡り仕掛けていた、争奪争い激戦企業だった。
樫本さんは日本を出る時、『何年かかってもやり遂げて来い』と送り出されたそうだけど、なんとたったの二年で業務提携を締結させたのだ。