百花繚乱 社内ラブカルテット
二年前、ロンドンから帰国すると同時に、その大いなる業績への貢献度を評価され、課長昇格を果たした。
この若さでの課長昇格はウチの銀行の長い歴史の中でも最年少で、あらゆる意味で銀行のレジェンドとも言われる、トップ級のエリート銀行員なのだ。


しかも。


「気遣ってないよ。本来なら終業後に至急の仕事で残業させるなど、言語道断。本当に申し訳ない。今後はできる限りこのような依頼をさせないように、ウチの部員にも言っておくから」


偉ぶったところなどまったくなく、なんとも柔らかい物腰。
まさに英国仕込みの本物の紳士で、独身という効果もあり、彼に憧れている女性行員は星の数ほどいる。


だと言うのに、浮いた噂を一つも聞かない。
それはひとえに、彼がモデル並みのイケメンのせいだ。


みちる曰く。


『すご過ぎて欠点がどこにも見つからない。パーフェクト過ぎるのよね。並みの女からしたら、絶対に手の届かない夢の中の王子様。彼に釣り合うわけがないから、最初から腰が引けちゃって、観賞用でいいって言うか』


確かにその通り。
私もそこは納得だ。


そんなことを考えながら、クリアファイルから書類を取り出し確認する樫本さんの横顔を、そおっと観察した。
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