百花繚乱 社内ラブカルテット
このまま黙っていても、一秒ごとに心のヴェールを剥ぎ取られていくような気がする。
無関係の樫本さんを巻き込んで、景を尾行している手前、黙秘権を貫くというのもいかがなものか。


結局私は、タクシーが走行中の時間を使い、今この状況に至るまでの出来事を樫本さんに説明した。
私が話し終えるまで、彼は一言も口を挟まず聞いていたけど、やがてタクシーが大通りから路地に入った頃、『ふ~ん』と鼻を鳴らした。


「君も勘付いてると思うけど、十中八九、田神が浮気してるな」


眉尻を上げることもなくシレッと言い放たれ、わかっていても胸がズキッと疼くように痛んだ。


「そ、そんな簡単に結論出さないでください。今だって、一緒にタクシー乗るとこを見ただけで……」

「で、二人がどこに行くか見届けるつもりなんだろ? 古川さん。どうやらどっかの住宅街に入り込んできたけど、この辺、見覚えは?」

「え?」


樫本さんが顎でしゃくるように私の視線を窓の外に促す。
私は従順に運転席側の窓から外を眺めて、その見覚えのある風景にゴクッと喉を鳴らした。


「景……田神君の、マンションの近所……」


樫本さんの質問に答える声が、最後は消え入るように尻すぼんだ。
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