観覧車のモノローグ
 唇に風が触れた。

「きっと、会おうね。また・・・」

 彼女は呟きを残して、消えた。

 彼女がここに現れることはない。

 そのことだけはわかった。



「大丈夫か?」

 気が付くと、観覧車のゴンドラの外に、連れ出されていた。

「彼女と、ちゃんと話はできたか?」

「ああ」

「よかったな」

「なぁ、一つ聞いてもいいか?」

「何だ?」

「お前に彼女は見えていたのか?」

「いいや。でも、今日はいるってわかった。なんでだろうなぁ」

 不思議な笑みを浮かべている。

「もしかして、話してくれた同じような出来事って?」

「隠しても、バレたか。そうだよ。俺自身が経験した事実だ」

 やっぱりそうだったか。

「彼女はもう現れないよ、ここには。今度はきっと、お前にも見える状態で会えると思う。いや、そうしたい」

「待ってるからな」
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