春色のletter
「急に誘って悪かったな」


帰り際、佐伯さんがそう言った。


「いえ」


そう言って軽く首を振りながら、


「…そんな言い方するんだ」と呟いた。


「ん?」


「いえ、本当に『いつも』ありがとうございます」


私は深々と頭を下げたあと、にっこりと笑った。


「いや」


佐伯さんは頭をかきながら、少し照れたように笑った。


その後ろで、沙也さんが手を振っていた。


私も軽く手を振り返して、佐伯家を出た。




外に出ると、そのマンションを見上げた。


うらやましさより、暖かい場所に思えた。


少し気持ちを取り戻せたようだ。
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