美称・臥龍 喬子の生き様
ある夜






いつものように出勤モードで、
髪をセットし、綺麗なメイクアップで着飾った喬子は、
お店へ向かうため、
いつものタクシーを呼んだ。


手には、運転手さんへの労いのいつもの缶コーヒーと
、今日は、それプラス、運転手さんの仕事に欠かせない
ボールペン。



どれほど華やかになったとしても、
自分を見失わず、
人としての礼儀や思いやりを忘れないことが、
喬子のモットー。





サロン脇の路地で待つ喬子の前の通りに、
程無くして、タクシーがやってきた。

速やかに後部座席のドアが開き、喬子は、タクシーへと歩み寄る。


すると、

人気の無い路地から 人が出てきた気配に
何気なくその方へ目を遣ると、
恰幅の良い 和服の老人男性が、よたよたと歩いて出てきて、
次の瞬間、

胸の辺りを押さえながら、苦しそうに倒れた。


「!!大丈夫ですか!??」

喬子は、咄嗟に声を掛けた。


「あっ……あぁ…」

老人男性は、応えているようだが、苦しそう。

胸の辺りを押さえていることに、
喬子は、心臓発作なのだろうか…と察し、老人男性に尋ねた。
“もし予想どおりなら、早く飲ませなければ”

「薬とか、飲まれてますか!?今、持ってます!?」

「ある………巾着に……」

「わかりました!」


喬子は、老人男性の巾着から薬を取り出すと、
自分のバッグからミネラルウォーターの入った水筒を取り出して、老人男性に 飲ませた。



程無くして、老人男性は、少し 落ち着きを取り戻した様子。


“良かったぁ……間に合った…”

喬子は、安堵しながら 老人男性に言った。



「掛かり付けの病院は、何処ですか?
落ち着きを取り戻したとはいえ、油断は禁物です。
病院へ行ってください」


そう言うと、喬子は、自分が呼んで待たせてあるタクシーの運転手に、老人男性を 病院へと連れて行くように頼んだ。



喬子と 車を降りてきた運転手とで
老人男性をタクシーに乗せて、

喬子は、タクシーを見送り、
お店へと 向かった。
< 23 / 35 >

この作品をシェア

pagetop