Honey ―イジワル男子の甘い求愛―


――つまり、宮地は本当に私のことが好きってことなんだろうか。

そんな疑問が頭のなかをぐるぐるしていて、それを〝いや、まさか〟という否定が追いかける。

だって、あんな恋愛観の宮地が〝本気〟って……ありえない。
私から見ても、真剣な恋愛に向かないと思うのに。


「――まぁ、なんていうか……正直、自分でもわからないんだよなぁ。気付いたらじわじわ浸食されてたっていうか、気持ちのなかにだいぶ入り込まれてて、あ、俺本気でこの子が好きなんだ、ってハッとした感じ」

十四時の食堂にいるのは、私と松田さんだけだ。

食堂といっても、そう名前の付けられた部屋ってだけで、会議室となんら変わりはない。

部屋の真ん中に長机がコの字に並んでいて、壁にテレビがかかっている。
会議室と違うのは、冷蔵庫やレンジやポットがあったり、水道があるくらいだ。

テレビからは午後のワイドショーが流れていた。

『こんにちは! 七月二十八日、水曜日、本日も届いたばかりのニュースを――』と、明るい女性アナウンサーの声が聞こえてくる。

内部職員は大体、十一時半から十三時半までの間に昼食を済ませる。
でも、今日はややこしい電話を受けてしまって、その処理をしていたら遅れてしまった。

松田さんたち営業は、その日の外回りの都合で好きなときにお昼休みをとっているけれど、それでもこんな時間は珍しい。
どうやら、話好きの顧客につかまってしまっていたらしい。

食堂でたまたま一緒になって、最初は世間話をしていたのだけど……話しながらも頭のなかは昨日の宮地とのことでいっぱいだった。

だから、『松田さんって、軽い恋愛しかできなかったのに、どういうきっかけで恋愛に本気になれたんですか?』と思い切って聞いてみたのが、今から五分前の話だ。


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