Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「おまえが大学のころテレビに出てて、そのとき、この中で誰がタイプなんだって聞いたけど、おまえは〝誰もタイプじゃねー〟ってそればっかりだっただろう。
今なら時効だ。教えてくれてもいいだろ?」
眉間にシワを寄せている状態の涼太相手にこんなグイグイいけるのは、おじさんと菜穂くらいしか見たことがない。
やっぱり、家族ってなると遠慮とか飛んじゃうものなんだなぁと眺めていると、不機嫌マックスの涼太が「だから」と口調を強めた。
「誰も好きじゃねーよ。だいたい、テレビ出てる女で可愛いと思ったヤツなんかひとりもいねーし」
はっきりと答えた涼太に、おじさんはピタリと止まる。
それから眉を寄せ心配そうな表情を浮かべた。
「おまえ……そんな理想が高かったのか……。いや、涼太はたしかに見た目で言えば、そのへんのモデルなんかよりもレベルが高い。
でもなぁ、だからといって、付き合う相手にアイドル以上のルックスを求めるのは……ん? でもまぁ、できないこともないか……」
そこまで言ったおじさんが、パッと明るい顔をする。
「そうだな。俺が探してやろう。なに、心配するな。物件なら何千件って取り扱ってきたんだ。顧客の希望に沿った物件を探すのは得意分野だ」
ニッと歯をのぞかせたおじさんは、きっと引く気はないんだろう。
昔からおじさんは言いだしたら聞かないって菜穂から聞いてるし……これまでのやり取りを見ていても、その通りなんだってことはわかる。