Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「さぁ、涼太。条件を言ってみろ」
Yシャツを腕まくりしたおじさんが、白い紙を取り出しペンを握る。
女の子を物件扱いするのはどうかと思うけれど、おじさんは、優秀だ。
おじいさんから受け継いだときには小さかった不動産屋を、おじさん一代で他県にまで展開するほどの大きさにしたほど仕事ができる人だ。
そんなおじさんが本気を出して涼太のタイプの女の子を探し出したら……本当に見つかってしまうかもしれない。
それは……嫌だ。
「あの、私――」
家族の話だけど。こんな場で、他人の私が口を挟むべきじゃないのはわかってるけど……それでも……!と、口を開いた途端。
隣で涼太が「条件か……」と話し出す。
「顔立ちは、人が良さそうなまぬけ面で身長は160ないくらい。身体付きは普通。胸は……そうだな、Cないくらいか? で、性格は穏やかで、すぐ〝大丈夫〟とか強がる。
男の趣味は悪いけど、基本的にはなんつーか……優しいし、柔らかいから、一緒にいるとすげー楽だし落ち着く。ただ、俺のこと男として見ないのがムカつくけど」
淡々と説明する横顔をポカンとして見上げることしかできずにいると、視線に気付いた涼太は私をチラッと見てからそっぽを向く。
今の説明が私のことを言っているんだってくらい、私にだってわかった。
私が、色んなことを気にしてなにも伝えられずにいるのに、涼太は返事をずっと待っていてきっと苦しいのに、なのにこんな場で、また私に気持ちを伝えてくれている――。