Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「俺、今日はとことん甘やかされたい。絶対そうあるべきだと思う。だから唐沢に折り入って頼みがある」
「えー……女の子紹介してとか言われても無理だよ」
どうせそんなことだろうと思い先手を打つと、鶴野は「違う」と首を振り、また私を見た。
「今日、俺をなぐさめてほしい。膝枕して頭なで続けて欲しい」
「えー、なんの見返りもないのに? っていうかその前に、人の頭って結構重いって知ってる? 愛情があればそこもカバーできるけど、愛情のカケラもないのに膝枕なんて私にとっては苦行みたいなものじゃない?」
「おまえには可哀想な同期にかける優しさのカケラもないのか……」
肩を落としまるで捨て犬みたいな顔をする鶴野に、「冗談だって」と笑う。
「支店での営業成績よかったらしいし、鶴野も頑張ってるんでしょ? そういうのを見ててくれる人がきっといるから元気出して。ほら、これあげるから。あーん」
ひとつ残っていたにんじんをつまんで差し出すと、鶴野は一瞬顔を輝かせたあと、それを苦笑いに変えた。
「にんじん嫌いなだけだろー」
そう言いながらも、顔を寄せて口を開ける鶴野におかしくなりながらそのまま腕を伸ばそうとして……横から手首を掴まれる。
見れば、宮地が私の手首を掴んでいて……そして、そのまま自分の方に寄せると、にんじんにパクンと食いついた。
「俺のにんじん……!」と悲痛な叫び声を上げたのは鶴野だ。
「食べたかったの? そんなに好きだったっけ?」
そういえば野菜好きだったっけ……と思いながら見ていると、宮地は私の手首を離してから「んー、まぁ」と曖昧な返事をする。
それから、私の頭をぐいっと抱き寄せた。
宮地の首のあたりに頭を抱かれ、思わず身体を強張らせていると、宮地が言う。