Honey ―イジワル男子の甘い求愛―
「そっか。じゃあ、飲み会とか? あ、だからここにいたの? このへん、居酒屋多いもんね」
金曜日の夜だし、涼太も同期会とかしていたのかもしれない。
そう思い聞くと、「まぁ、そんなとこ」と返ってくるから、安心する。
涼太はこんな態度だから、同期とうまくやれてるのかなって心配だったりしたけれど、同期会に誘われているならよかった。
「そっか。よかったよかった」と姉気分でつぶやいてから「途中まで一緒に帰ろうよ」と誘うと、「ん」と短い声が返ってくる。
立ち話をやめ、隣に並んだ涼太と一緒に歩き出す。
会った頃は、私のほうが少し高かった身長は、今や比べっこするまでもないほど伸びている。
175を超えたって聞いて驚いたけど、菜穂も170あるし、この姉弟はこういう遺伝子なんだろうと納得した。
そして、ついでに言えば、うらやましいことに美形の遺伝子を継いでいるんだろう。
姉弟して通行人が振り返るくらい整った顔をしているから、菜穂とも涼太とも並んで歩くのがたまに嫌になってしまう。
とくに涼太と一緒に歩いていると厄介だ。
思っているそばから、向かいから歩いてくるOLふたり組が涼太を見て口元を緩めていて……そのあと、隣を歩く私に視線を移し首を傾げたそうにする。
〝彼女だと思う?〟
〝違うでしょー。ただの同僚ってとこじゃない?〟
そんな会話が聞こえてきそうなOLふたりを見て、ああほら……と苦笑いがもれた。