俺様御曹司とナイショの社内恋愛
「本来はうちがこういった手を打っていかなければいけないのに、面目ない」
と雪瀬が首を振る。

しかしですね、とテーブルに置いたファイルに手を乗せた。
「我が社にも、むろんゲーム作りのノウハウは蓄積されていますし、業界内の人脈もあります。
こういったデータをもとに、女性たちが求める最大公約数的な作品を作ることぐらいはできるでしょう」

長年ゲーム製作に携わってきた(であろう)ディレクターとしての矜持がのぞく。

ですが、と雪瀬の言葉は続く。
「そういった作品は、底が浅くて毒にも薬にもならない。面白くないんです。
受け手側は常に、今までになかったものを求めています。
相手の既成概念、想像力、既存の世界観を超えたものを提供しなければ、ヒットは望めません。プレイヤーも目が肥えてますから・・・」

なにか、新しい切り口があれば・・・
ぽつりと雪瀬がもらす。

小さなつぶやきが、切実に響いた。
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