俺様御曹司とナイショの社内恋愛
迫る欲望から逃れようと、彼の腕の中で身をもがく。
だが、白石の意思そのもののように、追われ、逃げ道をふさがれる。
捕らえられる———

「・・ぅ・・っ・・」

息ができない、もう何も考えられない、翻弄されるだけ・・・

「———だいじょうぶ、川本さん」

ぐったりしていると、そんな言葉をかけられる。
誰のせいで・・・

「キスしてるときは、鼻で少しずつ息するといいよ」

ほっといてよ・・・だいたい、あなたが無理やり・・・

「勤務時間中だし、戻りますか。———止められなくなりそうだ」

郁の手を引いて、昇降口へ歩き出す。
体にうまく力が入らなくて、足がふらつきそうだ。

「ちなみに、今日も午後からOtomotionに訪問だから」

「えっ!? 先週の金曜日うかがったばかりですよね」

「日参して、こっちの熱意を伝えていかないと。悠長に構えてるのは、性分じゃないんだ。多少強引な手を使おうと、絶対に落とす」
つなぐ手に熱と力がこもる。

あなたは “多少” どころじゃないと思います。
と郁は内心つぶやいた。
< 44 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop