俺様御曹司とナイショの社内恋愛
えっ、と雪瀬が虚をつかれた表情を浮かべる。

白石がさしだす提案書は、数センチの厚みがある。

「テーマは、“年下攻め” で考えています」

「“年下攻め” 、ですか・・」
書類をめくる手を止めて、雪瀬の眉が上下する。

いつの間にあんなぶ厚い提案書を、先週の金曜日にはなかったはずなのに・・・というか、年下攻め? なんだそれは。

「はい。男性キャラは全員ヒロインより年下です。いわゆる可愛い弟タイプから、俺様系までとり揃えますが、年下の男性に振り回されるヒロイン、というのがひとつの特色になります」

どうやら“年下攻め” なるものは、年下から攻められるという意味で、恋愛のパワーバランスで年下が上に立つことをいうようだ。
・・・なんかどこかで、似たようなシチュエーションを経験しているような・・・

「う〜ん、“年下攻め” か・・・」
うなるように雪瀬がつぶやく。

どう断ろうかと悩む声ではない。白石の提案を吟味し、売り物になるか思案を巡らせているゲームディレクターのそれだ。
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