それはちょっと
「何かを奢るとか何かをするとか」

「…部長が、ですよね?」

「当然」

部長の返事は同じだった。

本当にやる気満々だ。

「私が銀行強盗しろと言ったら部長はやるんですか?」

そう聞いたら、
「さすがに犯罪はやらないよ」

最もらしいその答えが部長から返ってきた。

どうやらそこはわきまえているみたいだ。

私のために犯罪をやるつもりは1ミリもないらしい。

…まあ、それが当たり前な訳だけど。

正直なことを言うと、彼と一緒に話をしていると何が何だかよくわからなくなってくる。

「欲しいものはない?」

話はまだ続いていたようだ。

「ありません、あったとしても自分で買います」

私はそう返事をして話を強制的に終わらせると、ブラックコーヒーの缶をゴミ箱に捨てた。
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