それはちょっと
「そっちに行ってもいいかな?」

部長は私がいるデスクを指差すと聞いてきたので、私は首を縦に振ってうなずいた。

「聞きました」

部長が私の隣に歩み寄ると話を切り出した。

「上層部の方で起こっている跡継ぎ問題…と言っても、噂で聞きかじった程度ですけれども」

そう言った私に、
「そうか」

部長は返事をした。

「僕としては、彼のお兄さんと弟のどちらかが会社を継げば丸く収まるんじゃないかなって思うんだけど」

「…まあ、そうですよね」

「社長としては複雑だろうね。

まさか、幼い頃からかわいがっていた甥っ子が会社を継がないなんて言い出したからね」

「でしょうね…」

私と部長はやれやれとそろって息を吐いた。
< 78 / 90 >

この作品をシェア

pagetop