それはちょっと
突然抱きしめられたことに戸惑っていたら、
「――やっと、南くんが僕のものになってくれた…」

部長が言った。

「えっ?」

腕の中から聞き返すと、
「南くんが僕のお嫁さんになってくれた」

部長が言い返した。

「お、お嫁さんって…まだ、そんな段階じゃないですよ?

と言うか、気が早いです…」

腕の中で言い返した私に、
「でも、君は僕のお嫁さんになるんでしょ?」
と、部長が言った。

「そ、それは…」

そうだ、部長はこんな人だった。

いい意味でも悪い意味でもマイペースと言うか、自由と言うか、何と言うか…。

まあ、いいか。

「南くん」

部長が私の名前を呼んだかと思ったら、あごに彼の指が添えられた。
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