天神の系譜の奇妙なオムニバス
「古奈美姫も、貴様も、随分とあの男を買っていたようだがな」

大典太を鎖分銅に絡め取ったまま、伊蔵は刀を振るう。

刀を封じられた沖田は、近い間合いで斬撃を躱し続けるしかない。

「東郷は修羅だ。俺のような殺人狂ではないが、大義の為なら赤子も殺す。あんな小僧殺るのに、一分の躊躇いもない」

「…そうですか」

もう何度も切っ先が掠めている。

頬に、着流しに刻まれる刀傷。

それでも冷静さを欠く事なく、沖田は好機を耐え忍んで待つ。

「ならリュート君は只の小僧です。貴方のような殺人狂でもないし、大義の為でも赤ん坊を殺したりしません。敵の貴方でさえ、殺すのは躊躇うでしょう」

「つまり甘ったれで、戦場に立つ資格などないという事だな」

「資格などないですよ」

振り下ろされた刀を、沖田は絡みついた鎖分銅で受け止める!

「でも、覚悟は持ってますけどね」

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