天神の系譜の奇妙なオムニバス
袈裟懸けの一撃!

伊蔵が軽装とはいえ鎧を身に付けていなければ、彼の体は斜めに切断されていただろう。

「その気になれば誰だって殺せる…刀1本で人は殺せる…でも、どんな悪党でも、己の身内の仇であろうと、殺さない…許す心を捨てない…それが英雄です」

「…青臭い…」

胸の刀傷を押さえ、伊蔵は歯噛みした。

あの大典太、何という切れ味だ。

鎧ごと斬り、体にまで刃が達した。

だが、沖田も鉤爪付きの拳をまともに食らっている。

ここは東郷を見捨ててこの場から退き、新しい飼い主を探して仕切り直しを…。

そう考えた伊蔵の前で。

「……」

沖田は大典太を己の身に引きつけるようにして、刺突の構え。

限界まで、体の可動域ギリギリまで、バネのように縮こまらせる。

しなやかな沖田の体が、その反動を解き放つ時、その威力如何ばかりか。

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