【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
他愛ない、会話。
でも、それは、お互いの存在を感じるための、大事な行為。
「……相馬が、いてくれて良かった」
沙耶は、基本的に天然だと思う。
いや、天然と言うより、無自覚?鈍感……
自分を好きな男の耳元で、普通、そんなことを言うか?……まぁ、俺は気持ちを伝えてはないが。
「俺も、沙耶がいてくれて良かったよ」
……古の愛は、遠い記憶の中の約束。
沙耶の失われた記憶、隠した記憶を今、これから、解き放つ。
本当は、解き放ちたくはない。
沙耶が苦しむのは、分かっているから。
それでも。
思い出してほしいとも、思う。
俺達が、共通に持つ記憶。
自分勝手な話だけど、愛しているから。
草志が夕蘭を愛したように、
俺も沙耶を愛しているから。
夕蘭の追い求めた夢を叶えられなかった俺は、剣を携え、微笑んだ姫の両の手に全てを託した。
重ねあわすことの出来なかった未来。
終わりなき因果を、俺達は終わらせることができるだろうか。
用意されていた車に乗り込み、俺は、沙耶を抱く腕に力を込める。