【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……ところで、何かあったのか?」
「んー、相談ね」
「おう」
コーヒーを一口飲み、沙耶に顔を向けた。
沙耶は、ニッコリ笑って。
「高校、やめようと思って」
……そして、とんでもない爆弾発言をかました。
「…………は?」
「だから、高校を……」
「いや、待て。何で、そんな結論に至った?なんか、あったのか?」
「んー、お父さんとも話し合って決めたことだよ?でも、そだねー、強いて言うなら……」
沙耶は額に手を当て、んーと考え始める。
(親が親なら、子も子か……)
蛙の子は蛙。
そんな言葉が、頭に浮かんだ。
「あ!」
沙耶は弾んだ声をあげ、鞄から封筒を取り出すと、俺に差し出す。
「勇兄ちゃんの結婚式への招待状ね」
……おい、高校中退の話は?
がらりと変わった内容にたいして違和感も抱かずに兄の朗報を喜ぶ沙耶に、訝しげな視線を送る。
すると、俺の視線に気づいた沙耶が手を弾いた。
「そういえば、夕蘭に逢えたんだって?良かったねぇ」
……可笑しい。可笑しすぎる。
いつもの沙耶の雰囲気じゃない。
本当に、何があった?
「…………沙耶、お前、気づいているのか」
「?……何に?」
自分が可笑しいことにも、気づいていない?
さっきから、ハッキリとしない話の内容。
平日なのに、学校に行かずにここに来た理由。
なんだ?
沙耶は、何を考えている?
普段から、ポーカーフェイスで何を考えているのかわからない沙耶だが、こんなことはなかった。
(……一ヶ月。その時間)
短いようで長い、その時間に何があったのか。