【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……それで、俺が騙されるとでも?」
「……っ、だから、なんのこと?」
とぼけて、やり過ごしてきた沙耶。
彼女は同じ手を、俺に使う。
俺は箸を置き、偽りの笑顔を浮かべる、沙耶の手を取った。
本人は気づいていないだろうが、この手は微かに震えていて。
「何のこと?、じゃない。なにか、あったんだろ?だから、俺の元に来た」
「……何でもないわ」
「じゃあ、何で、高校をやめるんだ?何で、俺の元に来たんだ?そんなに震えて……お前は、何を不安に思っている?」
判らない。
沙耶という、人間が。
彼女は何を思い、何によって、苦しむのか。
「秘密は、あっていい。だが、不安なことは口にしても良いだろうが。誰かに縋ることを覚えろ。前みたいに……あれは、恥ずかしいことじゃない」
堂々と胸を張り、強い目をした沙耶。
けど、その瞳は虚ろで、悲しそうで、どこか諦めていて、冷めていた。
いつだって気丈に振る舞い、決して、弱味を晒さない。
(……もう、良いだろう)
「…………鋭いのか、鈍いのか、判らない人ね」
お互いの間に、沈黙が流れた。
俺たちが、当たり前に手にする未来。
それを、沙耶は望んでいない。