【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「……お前、生に執着がないだろう」


「……は」


俺の一言で箸を止め、視線すら動かなくなった沙耶は、震える声で言った。


そして、偽りの笑みを浮かべ、首をかしげた。


「……なんのこと?」


流石だ。


もう、その言葉しか、出てこない。


ここまで、心を殺し、人に感情を読ませない人間はいないはずだ。


必ず、心のどこかでは何かを望み、震えてる。


それが、沙耶にはない。


『沙耶は、おかしいよ。だって、俺が触れても読めなかった』


古くから、特別な力……読心力をもって生まれる、楪家。


そこの次男である蒼生は、そう言った。


沙耶は、なにも考えていないのだ。


顔にも出さない、心でも、考えていない。


ただ、漠然として、伝わってくる思いは。


大きな”不安“。


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