【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


”姫“としては、まだ、幼い月姫の願い。


それを、燕鳳は嬉しそうに笑って。


月姫の唇を塞ぐ。


『……約束する。だから、もう泣くな。……そうだな、お前は泣き顔もかわいいから、俺の前でしか泣かない。これは、お前が俺とする約束だ。それと引き換えに俺はこの命がつきるまで、お前を護ることを誓おう』


その約束を、何度、生まれ変わっても、守っていた月姫。


今だって、夏翠になった今だって、記憶はないのに、守っている。


『ほんにか?妾とずっと共にいてくれるのかえ?』


『そう、言ってるだろうが』


月姫の好きだった、彼の仕草。


それが、頭を撫でることだった。


撫でられた記憶のない、月姫には新鮮なものだったのだろう。


『ありがとうの……』


燕鳳の腕に月姫の涙が伝う。


『いいから、泣き止めって』


彼の手が、月姫に触れる。


幸せな、時間。


それは、すぐに崩壊する。


やはり、運命に逆らえば、不幸になるのだと、誰かが月姫を嘲笑う。


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