【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


俺はおもむろに手を伸ばし、沙耶の頭を撫でた。


俺にできることは、彼女の願いを聞き届けることだけだった。


だって、彼女の真の心に届く愛情を、言葉を届けられるのは、彼女が本当に心から愛し、守りたい、幸せになってと願う、相馬だけだから。


「来世で、逢おう」


そう言えば、


「貴方が死んだあとでも、逢えますよ。運命が狂わない限り」


と、返される。


好戦的で、美しい女。


千夏を思い起こさせる女。


俺は千夏のように救えない女がいることを知っていて、手を伸ばさない。


それが、相手の望みではないから。


沙耶に頼まれた箱を片手に、俺は未練を断ち切るように病室から出、戸を閉めた。


最後のゲームをしようと、思いながら。

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