【完】☆真実の“愛”―君だけを―2





「……何度言ったら、わかるの!?」


病院に着き、廊下を歩いていると、そんな声が聞こえた。


この声は。


「……朝倉さん?病院だから、静かにしないと……」


部屋に入り、カーテンの中を覗き込んだ。


そこで、朝倉さんの腰を抱き寄せ、笑っていたのは……どこかで見たことのある顔。


「……止めようか、総一郎」


「えー?久しぶりにあったんだけど」


「病人が、入院中にすることじゃない」


「……そんなことを言ったら、俺、いつになったら、結婚できるのさ」


女と見紛う儚げな美貌の持ち主で、長い黒髪を緩く束ね左肩に垂らし、入院服を着た彼は不貞腐れた。


「朝倉さん、まさか……」


「婚約者です。……一応」


「一応、って酷くない?やっと、アメリカで手術を終えて、こっちに帰ってきたのに。あっち、厚化粧ばっかで嫌い」


笑顔で辛辣な言葉を吐くのが得意なこの男こと総一郎は、相馬の兄であり、御園家の長男。


病弱で、相馬が代わりに跡を継ぐことになっているのだが……御園総一郎(28)は、本当に昔から病弱であり、弱々しい子供だった。


『何で、僕はみんなと遊べないの?』


よく、窓の外を覗きながら、彼はそう言っていたが。


「人生ってさ、楽しまなきゃ損だよね。だから、ナースコールで緋奈子を呼び出して、婚姻届にサインして?ってお願いしたら、仕事中だって怒られたの」


「……ナースコールで、朝倉さんを呼び出さないでください」


「……直樹さん、相変わらず、固いねー」


「君が緩すぎ」


「え、そう?」


こんなにグダグダで、あれなのに……


「私、仕事に戻るから」


これでいて、御園で一番強いから、手に負えない。


相馬でさえ、叶わない相手。


「あーあ。緋奈子に逃げられちゃった」


残念そうに見せかけて、全然、残念そうに見えない総一郎は、ため息をつく。


「相馬は結婚したのになぁ……」


検討違いのことをいいながら。


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