【完】☆真実の“愛”―君だけを―2


「相馬が結婚?何の話だ?」


あいつはまだ、独身だ。


婚姻届にサインすることなど、あるはずがない。


沙耶が眠っているのに、書きようがないのだから。


「……あれ?おかしいな……してないの?結婚」


「してないと思うけど……だって、相馬が愛している人間は……」


総一郎に沙耶のことを伝えようとした、その時。


「先生!黒橋さんが……っ!」


「異変が起こった?すぐ、行く。……ごめん、総一郎、また、あとでね」


看護師がかけてきて、沙耶の変化を知らせた。


俺にできることは、すでに明確にしてある。


沙耶ちゃんが出産さえ終えてくれれば、何も憂うことはなかった。


だって、そのぶん、彼女に時間はできたわけだから。



「黒橋……黒橋……うーん、と……大樹?沙耶?」



急いでいた僕は、気づかなかった。


総一郎が何かを知っているような顔で、黒橋家の二人の名前を繰り返し呟いていたことに。



< 570 / 759 >

この作品をシェア

pagetop