【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「……黒橋沙耶。年は、19。家の近くにある、華西高校に通い、成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗、黒橋グループの一人娘であるから、家柄も良し。戸籍上では異母兄がいるが、実際はいとこ同士であり、兄……黒橋大樹は、剣道、柔道、空手道、合気道……数々の武道の有段者である。勿論、成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗で、異常と言えば、異常な家族。他にも、父親の黒橋グループの総帥、黒橋健斗が引き取った、病院系列では、姫宮に劣らない腕の持ち主が集まるという松山病院の一人息子であった松山勇真までもを、兄に持っている。二人の兄とは11歳差であり、松山勇真は医者に、黒橋大樹は、黒橋グループで働いている。松山勇真は医者としての人生は短いが、頭が良く、腕が良い上、親しみやすい人柄であるゆえ、同業者、患者関係なく、人気。黒橋大樹は未婚で、松山勇真は最近、入籍。10月に長女の葉月(はづき)が生まれ、家庭円満。現在、京都在住」
スラスラスラスラ……と、出てきた情報たち。
この兄の脳みそは、どうなっているのだろうか。
人の家の事情を、こんなにペラペラ……
「よし」
俺は、意を決して、ナースコールを押した。
『……はい、どうなさいました?』
「すいません、朝倉緋奈子さんを呼んでもらえますか?脱走者が……」
そう、看護師さんにお願いすると、相手は、快く請け負ってくれて。
「うわっ、緋奈子のことを呼んだよ……裏切り者……」
一方で、後ろでは、兄が声をあげた。
「はいはい。後で、尋問するからな。大人しくしとけ」
「帰ったら、手合わせでもしようか?」
「……気が向いたら」
沙耶が死んだら、俺は死ぬ。
だから、約束はもう、しない。
沙耶の存在は、俺の命以上だ。
等しいとすら、言えなくなってしまった。
「総一郎!」
暫くすると、看護師こと兄さんの婚約者である緋奈子が微笑みながら、部屋に入ってきて。
兄さんのことを引きずって、出ていった。