【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
□沙耶side■




「……今、死んでも、思い残すことないな」


それは、心からの言葉だった。


どうせなら、相馬の腕のなかで。


「この腕の中で死んでいけたら、良いのに……」


愛しているから、傍にいたかった。

でも、それは、あなたを傷つける。

だから、離れたの。

こんなにも、私を愛してくれているなんて、思いもしていなかったから。


『……あいつを失うことを認め、他の女を愛せ?……馬鹿、言うな。あいつがそんなことを言ったと言うのか?俺にとって、沙耶は唯一無二の存在……誰にも、代わりは効かねぇんだよ。絶対に、見つけ出して……』


甲斐から聞いた、相馬の言葉。


……知らなかった。


人を愛すと、こんなに辛くなるなんて。


愛さなければ良かったと、何度も何度も考えた。


でも、きっと、そんなことが無理なことも、恋をするということなんだろうね。


私を抱き締める腕に、力がこもる……。


「死なせない。何があっても、何をしても……お前が傍にいなくちゃ、俺が困る」


力強く、抱き締められてから、実感する。


(幸せだって)


死ぬ覚悟は、出来ていた。


諦めていた、なにもかも。


そんな暗闇のなかにいた私に与え、救ってくれたのは、私を震える手で力強く抱き締めるこの人だ。


「あり、がとう……」


双子に会えて、触れられて。


そんなことが出来たのは、相馬のお陰。


愛してるんだ、この人を。


私は、どうしようもなく。


「愛してるわ、相馬……」


震えるこの愛しい人の側に、一分一秒、少しでも永く、傍にいられますように。


< 662 / 759 >

この作品をシェア

pagetop