【完】☆真実の“愛”―君だけを―2
「なんですか?」
教室の入り口まで行き、見上げる。
「……お前、教科書なくなったのか?」
「誰が、その事を……ああ。数学の先生から、聞いたんですね」
真面目で、私を家のことで見ない学年主任は、私的には付き合いやすい相手で。
「学校に全部、おいておいたのか?」
「当たり前です。重いじゃないですか」
持って帰るなんて、冗談じゃない。
「……で、なくなったと」
「昔からあることなんで、気にしてないですよ?」
そう、もはや、習慣みたいなものだ。
その度に笑いながら、父さんは新しいのを用意してくれている。
そして、学んだ。
(どうせ、滅茶滅茶にされるなら、頭にいれとけば問題ないんじゃね?)
教科書の出費が浮く。
……で、今に至る。
「少しは、気にしろ!……授業はどうするつもりだ?」
けれど、あくまで、虐められていることがダメらしい、学年主任は私に問いた。
「……教科書の内容は、一通り頭に入っていますし……兄貴たちに入院中に教えてもらっていたんで、なんとかなりますよ。場合によっちゃ、兄貴のお古をもらうし」
学んだあの日から、すべては叩きいれるようにしている。
「そういや、先生から見れば、兄貴たちはどうでした?」
この学校の出身である、兄貴たちのことを知っている、先生。
「藪から棒に……なんだ?」
「いや、ちょっと、気になって」
「そうだな……黒橋大樹……あいつは、ワルだった」
聞けば、授業はサボるし、学校には来ないし、夜遊びはするし……窓からは、飛び降りるしで、凄かったらしい。