偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「ってことで、番付表に追加するならば、彼は……そうね、西の関脇ってとこかしら」
私は常に懐に携帯している『花園商事独身男性番付表ー2019年度版ー』を取り出しながら、言った。

「えぇ〜厳しくない?大関くらいいくでしょ」
「いやいや、我が社の誇る大関ツートップには、まだまだ及ばないよ」
「でもさ、商社って転勤ばっかりだし、聞いたことないような国にも飛ばされるしさ。私、建設会社の彼のほうがいいかも!」

ランチを食べながら、こういうくだらない話でストレス発散するのが私たちの日課だった。

「でもさ、なんで大相撲番付表なのかな?普通にランキングでよくない?」
同僚の素朴な疑問に、私は答えてやる。
「それはね、いま総務部で部長なみの権力握ってるお局の並木さんが大相撲ファンだからよ!並木さんが受付嬢時代から、脈々とこの番付表は受け継がれてるわけよ」
「おぉ〜」
「大横綱、営業部の鈴ノ木を倒す強者が今後あらわれるかどうかが見どころよね」
番付表にただひとりの横綱として名を刻むのが、営業部の鈴ノ木光一だ。
まだ独身で残っているのが、奇跡にちかいような逸材だった。

「それはないでしょ。鈴ノ木さんが独身である限り、彼の一強は変わらないわー」
「あ、でもさ、営業部の人から鈴ノ木さんに縁談の話きてるって聞いたよ!なんでも取引先の社長令嬢らしくて、鈴ノ木さんにとっても美味しい話だから、ほぼ決まりじゃないかって」
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