偽装新婚~イジワル御曹司の偏愛からは逃げられない~
「えーっと、お待たせしました。ちょっと頑張って、おしゃれしてみたんだけど」
リビングに入ってきた私をひとめ見て、光一さんはとても驚いた顔をした。
でも、残念ながら、それは私が期待していたものとは違う種類のものだったようだ。

光一さんは露骨に顔をしかめる。
「まぁ、華の努力は認める。けどさ、夜のパーティーに行くならともかく、日曜の昼に夫婦で
出かける格好じゃないよな。俺、今日は図書館に行きたかったんだけど……」
ガツンと後頭部を殴られたような衝撃……はちょっとおおげさかも知れないけど、それに匹敵するくらいのショックを受けた。
なぜなら、悔しいことに光一さんの指摘通りだからだ。日曜日の昼間のデートというTPOが、すっかり頭から抜け落ちていた。とにかく、『セクシー・色気・大人の女』というキーワードで私の頭の中はいっぱいだった。
落ちついて考えてみると、さわやかな春先に黒、ベージュ、ワイン色というカラーリングもあまり似つかわしくない気がする。

「それに、華の雰囲気にその巻き髪とか濃い目の化粧は似合ってないよ。いつもの感じの
方がいいと思うけど」
「でも、それだと地味だし……」
朝から必死に頑張ったメイクも髪も服装も全否定され、なんだか泣きたくなってきた。



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